「はいはい。」
そう言って、服を見て行く。
すると、リザも僕に着いて来て、楽しそうに絡んできた。
「私ね、こうやって服選ぶの夢だったの。」
「え…」
「オーダーメイドって、あれ私の要望通らないの。
お母様の意向を汲んで作られるから。」
「そうだったんだ。」
「でも、こうやって、自分の好きな服選べるなんて、素適。」
町の人々は、オーダーメイドに憧れるのに、リザは逆なのか。
「あ、これ素適。」
そう言ってリザが手に取ったのは、パステルイエローのワンピースで。
「髪の色と同系色だから、混ざっちゃうよ。」
「いいの。
着たいものを着たいから。」
そう言われて、少し嬉しくなる。
実はこのワンピース、僕のデザインしたものだった。
この前まで、王都にある服飾の学校に通い、その後は修行のために、王都にいるデザイナーの弟子をしていた。
だから、最近、この店へと帰ってきたのだが、やっとこのデザインが母さんに認められたのだ。
それをリザが選んでくれるなんて、ちょっとは苦労した甲斐があったかな、なんて。
「おばさま、これ着ても……って、あれ?」
母さんがいない。
居なくなるなら、一言言ってくれればいいのに。
「たぶん、夕飯作りに行ったんだと思う。
ほら、その服だけじゃなくて、他のも選ぼ。
毎日それを着る訳にも行かないし。」
「うん。」
嬉しそうに寄ってきたリザに、少しドキドキした。
何気に今、2人っきりなのだ。
リザは気にしてすらいないだろうが。