それをなす術もなく見送れば、彼女はいたずらっぽく笑う。


「さっきの続きする?」


そう言って、首に手を回してくる彼女が言うさっきとはあのキスの事か。


「しない。」


そう言って強めに引き離せば、さっきよりすんなりリザは離れていった。


「じゃあ何しよう。」


「消毒。」


「へ?」


「さっき途中だったから。」


そう言って立ち上がってさっきの部屋に消毒液を取りに行こうと思えば、


「別に擦り傷だし、大丈夫。

それにこんなにたくさん消毒するの面倒だし。」


そう、彼女の足には無数の擦り傷があった。


どうやら逃げて来る途中に靴を捨てたせいもあり、草木で切ったらしい。

「ダメ。

女の子なんだから、ちゃんと手当して、傷が残らないようにしないと。」


そう強く言って、部屋を出る間際、悔しそうに睨まれた気がするのは、気のせいだろうか。



「そうやって時々女の子扱いするんだから。」


リゼットの独白は、彼には未だ届かない。