「あ……ジョギング中に雨に降られちゃって」

 ぽたぽたと前髪から雫が滴るほどに濡れている自分。

 その姿を見られているのが恥ずかしかったんだけど、その男性は去るどころか近づいてくる。

「俺の家すぐそこだから、傘、貸すよ」
「いえ、いいんです」
「この雨昼まで上がらないよ?」

 ザーザーと音をたてて降る雨を、私とその男性はじっと見る。

「すみません、じゃあ……傘だけ貸してもらえますか?」

 そう言うと、彼は微笑んで頷いた。