「な、なんでしょうか……」
できるだけ弱そうなヘタレ男を演じる。
「お前、松澤のやつか?」
「は、はい。そうです……」
「へぇー、こんな男でも松澤入れんのか。松澤も落ちたなぁ。」
ケタケタ笑いながら俺を挑発する男。何がしたいのか分からない。
「な、何か用ですか?」
「や、お前に用はないんだけどな、松澤の村雨愛梨ってやつがきにくわねぇんだよ。さっきもアイツに……」
よく分からないが、こいつは村雨愛梨という女にやられたらしい。
女にやられるってダサいな。
フッ
「あぁ?てめぇ何笑ってんだよ。」
ヤベ、声にでてた。
「わ、笑ってませんよ!すみませんっ!」
「もう許さねぇぞ。おらぁ!」
あーあ、ダルいな。喧嘩はしたくねぇし。
「す、すみませんでしたぁ!」
とりあえず謝って逃げた。
「ごらぁ待てー!!死ねー!」
ヒーヒー言いながら追いかけてくる男。
「おせぇよ、カス。」
小さく呟いてスピードをぐんぐんあげた。
そのうち、後ろには男の姿がなくなっていて、松澤の制服を着たやつらがちらほらと見えてきた。
再び猫背になり、速歩きで松澤高校を目指す。
もう絡まれるのは面倒だっつーの。
