床に落ちていたリモコンを手にとって、テレビをつける。
朝のニュースがやっていて、芸能人の話題をしているそうだ。
「やっぱり今はモデルの李月くんですよねっ!」
「私、李月くんの大ファンなんですよー!」
「彼は今ものすごく人気ですよね、これからもどんどん売れていきますよ。」
李月というモデルのことで話しているアナウンサーたち。
その李月が俺、真崎威月(シンザキイヅキ) 。
今一番人気とされているモデル。
そのせいで俺は引っ越しやら転校やらで仕事と同じくらい大変なんだが。
今日も、松澤高校というこの辺で一番悪い高校に転校する日だった。
とりあえず、用意をしないと。
髪の毛をボサボサにして、分厚い眼鏡をかける。
松澤高校の制服を正しく着て、これで完璧だ。
いつからか、こうやって自分を隠すようになっていた。
芸能人だからってこともあるけど、それ以外も理由はある。
だから事務所の人から変装しろと言われて、好都合だと思った。
用意が終わって時計を見ると、8時54分。
完全に遅刻だ、もう始業式始まってるな。
玄関まで猫背で歩く。これも自分を隠すようになってから癖になった歩き方だ。
ドアノブに手をかけ、一気に回した。
