「な……んで、だ」

どうして俺らは、ボロボロな状態で、床に這いつくばっている。
おかしいだろ?
あいつは、魔王は、玉座から一歩も動いていない。
それどころか、手も足も使っていない。
なのに、俺たちの攻撃は一度も当たっていない。
なんで……こんなことになっているんだ!!

「あっれー?もう終わり?君たちほんっと弱いねー」

俺らが弱いんじゃない。
魔王が強すぎるんだ!
だが、そんなこと言えるはずもなく、俺は唇を噛み締めた。

「もうちょっとはやってくれると思ってたんだけど…期待外れだったなー」

なにが期待外れだ。くそっ!

仲間たちは、みな気を失っているか、話す気力もないらしい。
魔王の声だけが、このただっ広い部屋に響いた。

「君たちさー、本当に勇者パーティーなの?」

「…っ!…そう……だ」

「へぇー。じゃあやっぱり人間って弱いんだね。気をつけなきゃ」

「…な…にを…だ」

「それは、教えちゃつまんないでしょ?
大丈夫。限りなく続く訳じゃない。君たちは、廃人にならない強い心をなくさなければいいのさ」

そう言って、魔王は指を突き出した。
そこに、多大な量の魔力が集まっていくのを感じる。
そして、それがまっすぐに放射された。

それは床を破壊した。

「なっ!」

それがいくつも放射される。

「うがぁぁあああああ!!」

カレンの叫びが聞こえる。
そちらを見れば、カレンの右腕のあたりの床は崩れ、そこにカレンが落ちそうになっていた。

「カレンっ…!」

俺は、ボロボロの身体に鞭を打ち、カレンの元へ行き、引き上げた。
カレンの右腕は、肘から下がなくなっていた。
剥き出しの骨が見え、旅をする前だったら、きっと気絶か吐くかしてただろう。
それくらい、グロテスクな光景だった。

さっきの攻撃が此れ程の威力だと言うのか!!
今のは指一本だった。
それでこの威力。
これが心臓に当たったらどうなる?
これが頭に当たったらどうなる?
これが俺に当たったらどうなる?
魔王が本気を出したら、俺らはどうなる…?
殺されるのか?

一気に感覚が現実へ戻ってきた。
そうだ。これはゲームじゃない。現実だ。
死んだら…終わり。

嫌だ。怖い。死にたくない!
俺はまだ生きていたい!!

「そんなに死にたくないのなら、取引をしようか」

絶望のどん底に叩き落とされた俺に、救いの手が差し伸べられた。