「やあ君たち。僕の世界へようこそ」
それは突然だった。
前にも体験した、地面が抜ける感触。
やっと見つけ出したカレンも、他の仲間たちも、誰一人、抵抗できずに落ちて行った。
落ちた先は、無限に広がる部屋。
壁が見えない。
その部屋の奥に、あの怪しい男がいた。
玉座に座って、こちらを見ている。
「…魔王ってのは、本当みたいだな」
男は笑った。
それはもう、同性の自分ですら見惚れてしまう程の、笑みを見せた。
「まぁっ!」
「わっ……」
「なっ!」
勿論、異性の彼女たちにも、共通するものだった。
皆、頬を赤くしている。
「ところで君たち、随分とみすぼらしい格好をしているね。最新のお洒落かな?」
「なっ!そんなわけないでしょう!!貴方の部下への躾がなってないから…!!」
サラサが大声で言った。
そう。何故か、カレンを連れてきたのは、あの八人将のステファノだったのだ。
なんとか倒したが、かなり苦戦した。
サラサのおかげで傷はないが、服はズタボロだった。
勝てたのは、奇跡に近かった。
あんなのが八人も居ると思うとゾッとする。
とりあえず、今日はここをでようとなった時に、地面が抜けた。
こんな状態でボスとの最終決戦に臨むことになるなんて、思ってもいなかった。
だが、ここで諦めてはいけない。
何故なら、俺は必ず生きて帰って、あの子と…加奈と、元いた世界に戻ると約束したのだから。
「あ、ごめんねー?君たちがそこまで弱いとは思ってなくて…」
「なんですって!?」
仲間たちが戦闘体制に入る。
俺も、何時でも攻撃できるように構えをとった。
「だからさぁ。そんな弱い君たちに、だぁいサービス」
媚びたような、甘い声に虫唾が走る。
「僕は、ここから動かないであげるよ。きゃー魔王様ったら太っ腹ー」
黄色い声を出し、自らを褒め称える。
そんなふざけた野郎は更にふざけたことを抜かした。
ここから動かない?
そんなんで、どうやって勝つつもりだ?
こんなふざけた男に、負けてたまるか。
「いくぞっ!魔王!!」
俺の言葉で、みな走り出す。
最後の戦いが今、始まった。
__ 魔王城 三階 中央部 にて __