「っ!」

「ハッ!魔人といえど、やはり子供!私の…勝ちだ!!」

少女の大剣が床に投げ出される。
その時にできた一瞬の隙をつき、その喉元へ剣を突きつけた。

「くっ!」

いくら少女の形をしていても、やつは魔人。
情けなど不要。

「さらばだ」

その声を合図に、やつの首を飛ばした。

「……ふう」

ズルズルとその場に座り込む。
今頃になって息がきれてきた。
身体が重い。
戦闘があと少しでも戦闘が長引いていたら、おそらく殺られていただろう。

だが、ここで倒れるわけにはいかないのだ。
私は魔王を倒すという目的がある。
それに、捕らわれた人も救わなくてはならないしな。

疲れた身体に鞭を打ち、立ち上がる。
部屋を目指し、再び歩みを進めた。



「ここか!」

端から三番目に、一つだけ結界が張ってある部屋を見つけた。
その結界はかなり強力なもので、簡単には開けられそうにもない。
ならばどうするか。
一つだけ、厳重に護られているなど、この部屋にはなにかがありますと言っているようだ。
ここを無視するては無い。

そこで、はっと旅先で譲られた御守りを思い出す。
それは、結界の解除に使われていたものだ。
貰ったのは一個だが、運良く、それを持っているのは自分。
ツイている。
これが効くかはわからないが、物は試しだと、扉のノブに手を乗せる。
案外すんなりと開き、拍子抜けした。

中に入ると、そこはとても豪華な調度品で飾られていた。
それは、王宮の物にも引けを取らない。
うっかり見惚れてしまったが、顔を振り、攫われた人を捜す。
こんな部屋に通されるくらいだ。
おそらく人質のために、何処かの国の王族でも攫ってきたのだろう。と、思っていたのだが、そこに居たのは以前にも見たことのある顔。

「なっ…!」

そこで、のうのうと眠っていたのは、かつて自分が担当していた罪人だった。

「何故貴様がここにいる!!」

私がそう怒鳴れば、やつはゆっくりと目を開けた。
寝起きで焦点の合わない視線が私を捉える。
その顔は徐々に驚愕の色に染まる。

驚きたいのはこっちだ!!
何故貴様がここにいる!!
やはり、スパイだったのか!!

言いたいことはたくさんある。
だが、それ以上言うことは許されなかった。

「君も、さっさと出てってよ」

突然聞こえた、上からの声の主によって。



__ 魔王城 三階 マキの部屋 にて __