「はあっ!!」
サクヤの一太刀で魔物が真っ二つに裂け、大理石のような材質で敷かれた床に崩れ落ちる。
「ったく!切っても切っても湧いてくるな!!」
カレンの方からも、不機嫌そうな声があげられた。
それも仕方ないだろう。
彼らはここ数十分、無限に湧く魔物を相手にしているため、ずっとここから動けていないのだから。
「これじゃキリがないですわ!ミリア!あなたの魔法で、どうにか出来ませんの!?」
「あと…ちょっと」
ミリアの足元に描かれた魔法陣は、ライトの魔法陣。
初級魔法の応用だ。
魔物達の緑色の血で描かれたそれは、ついに完成された。
「我が望むは魔を滅する清き光。
光の精よ。今、我の元へ集え。
シャイニーシャワー!!」
魔法陣から伸びた光の筋は、一本一本が魔物の心臓を貫く!
全ての魔物は苦しむ暇もなく絶命した。
「それってありかよ」
一瞬で勝負がつき、サクヤから呆れたような声がもれた。
床には一面緑色の魔物がところ狭しと倒れていた。
「だが、これは進みづらいな…」
カレンは魔物と魔物の僅かな間を探しながら、前に進む。
だが、次第にそうすることを諦め、魔物を踏みつけながら、歩き出した。
「私はいやですわ。こんなのを踏みつけるなんて」
サラサがその顔を嫌悪で歪ませる。
カレンの赤い軍服は既に魔物の血によって緑色に染められていた。
「んー、確かに、王宮育ちのサラサにはきついかもね」
だが、そうも言ってられないのが現場だ。
彼は、なるべく早く魔王を倒し、王宮へ戻らなくてはならない。
彼を待つ、愛しい人のために。
サラサが渋っているうちに、倒された魔物が次々と消え始めた。
しばらくすると、全ての魔物が消え去り、掃除の行き届いた綺麗な床が姿を見せた。
「まぁ!」
「…魔物…魔力?」
「え?」
ボソっと言ったミリアの言葉にサクヤは反応した。
「さっきの、全部…魔王の、魔力…で、できた…幻覚…?」
サクヤの顔に驚愕が走る。
「なっ!まさか!そんなはずはない!ちゃんと斬った感触だってあった!なぁ?カレン……あれ?カレンは?」
サクヤがカレンに同意を求めようとあたりを見回すと、すでにカレンの姿はなかった。
「まさか、先に行っちゃった!?」
「なっ!あれだけ単独行動に出るなと言っていましたのに!!」
「捜さなきゃ…」
三人は逸れた仲間を捜すため、走り出した。
__ 魔王城 一階 ホール にて __