「マキちゃんマキちゃんチュー」

「仕事したならいーよ」

「…えぇ!?本当!?」

……驚きすぎでしょ。

「ほ、本当に!?チューしていいの!?」

「ちゃんと仕事したならね」

あの夢で色々と吹っ切れた私は、変に意地を張らないで、この生活を楽しむことにした。

「うわぁ。頑張る。頑張るね!」

とても嬉しそうな魔王の声に、私まで嬉しくなる。
好きな人と話せる喜び。幸せ。
これら一つ一つを感じるのは久しぶりで、とても新鮮だ。
魔王の表情一つに胸が高鳴る。
あぁ、好きだなぁ。って感じられる。
私は幸せ者だ。
あの時はあの時で楽しかったけれど、今に勝るものはない。

それはきっと、魔王のおかげで。

「魔王、ありがとね」

たまにはお礼を言ってみる。
魔王を見上げると、なんだか凝視されていた。

なに?と首を傾げる。

魔王が口を開けた時、バタンと扉が開け放たれ、エーテルちゃんが現れた。

「……マキちゃんが可愛すぎて、集中できない!!」

「マキ!きょうはまちでひょうばんのケーキをもってきましたのよ!!」

エーテルちゃんをものともせず、叫んだ魔王とエーテルちゃんの言葉が重なった。
どちらとも、言ってることはだいたい聞き取れたので、魔王の膝からおりる。

「そっか。それじゃあ、仕方がないね。隣の部屋でエーテルちゃんとケーキ食べてくる。
仕事、頑張ってね」

瞳をキラキラ輝かせるエーテルちゃんの手を引き、部屋をでる。
扉が完全に閉じられる前に、呆然とした表情の魔王に伝える。

「終わったら、ご褒美ね?」

その時のいきなり目を輝かせる魔王の顔ったら。

「マキ?まおうさまになにをあげますの?」

純粋な瞳で私を見上げるエーテルちゃんの頭を撫でる。

「エーテルちゃんがもってきてくれたケーキ」

私はご褒美としか言ってないもの。
それをどう取ったかは魔王次第。

「まぁ!もしかしたら、いっしょにたべれるかもしれませんわね!」

「そうだね」

まぁ、そこは魔王の力量が問われますわな。
でも、少しくらいはゆっくり食べてあげてもいいよ?
なんてね。