目が覚めると魔王がいた。
自然と、目の前にあるこの見慣れたこの顔に、指先が触れていた。
まだ目を覚まさないことをいいことに、じっくりと観察を始める。
羨ましいくらいのピチピチ肌に、どんな手入れをしてるんだと問いたい 。
指先から、徐々に触れる範囲を広げてく。
突然、ピタッと触れていた手を止めた。

手汗、かいてないかな?

ごしごしと、パジャマ…ネグリジェって言うの?に手を擦り付けてから、触るのを再開する。

魔王は肌だけをとっても色白で、ツヤツヤで、ツルツルで。
魔王に欠点とか、あるのだろうか。

……てゆうか、普通にこんなことしてたけど、またベッドに潜りこんだことを怒るべきだったのだろうか。
でも、恋人同士だし…いや、恋人同士だからこそ問題なのか?

んー…。
まぁ、魔王は私の嫌がることはしないし、大丈夫だろう。

「魔王」

ポツリと呟く。
魔王はまだ起きない。
今から、大事なこと言うから、少しの間だけ、起きないで。
絶対だよ?

言うよ?

「大好き」

大好き。
面と向かって言えないから、寝てる間に言ってやる。
誰にも聞かれてないとわかっていても、やっぱり恥ずかしい。
パッと手を離し、布団の中に潜り込んだ。
しばらくそのままでいたら、やっぱり息苦しくなって、顔だけだした。

「マキちゃん」

はっと声のした方を見る。
目を覚ました魔王と目があった。

まさか、聞かれてた…!?
心の中で冷や汗が流れる。
でももしかしたら、聞かれてないかもしれない。
だから、なるべく表情にはださないよう努力した。

が、そんな努力は無意味だったようだ。
魔王は笑顔で私を抱きしめ、こう言った。

「僕も大好きだよ。マキちゃん」

やっぱり聞かれていたようだ。

恥ずかしい。
顔が赤くなったのを隠すように、魔王の胸へ頭を押し付けた。

そうだ。
後でベッドから蹴り落としてやろう。
乙女のベッドに潜り込むな、と言いながら。

でも今は、この頬の熱が冷めるまでは、しばらくこのままで。

あぁでも、ここはとても居心地がいい。
できればずっと居たいくらい。

ねぇ、私の頬が冷めないように、少しでも長く、こうしていられるように、あなたの熱を、私にわけてよ。