「マキちゃんチューしていー?」

「だめ」

「えー」

告白して、告白されて、それでも私たちの関係は相変わらず。
ただ、たまに頬とかにキスをされるようになった。
現に今も、こうやって隙あらばキスをしようと、まるで狩人のように…

「隙あり!」

ほら。された。

「ちょっと。なにすんのよ」

魔王の顔を引っぺがし、文句を言う。
しかし、魔王はいい笑顔で悪びれずに答える。

「チュー」

「……なんなの、あんたは。キス魔か」

こんなにキスをしたがるなんて、今までの彼女とか、きっと大変だったろうな。
そう考えた途端、魔王の目がすっと細くなる。

「僕の恋人は、後にも先にもマキちゃんだけだよ」

魔王は、私の考えが読めるのだろうか。
ピンポイントで答えが帰ってきたので、本気でそんなことを思ってしまった。

「マキちゃんの考えてることは、なんでもわかるよ。
大好きだもん」

「そう。私は、魔王の考えてることわかんないわ」

本当、魔王の考えは読めない。
好きが足りないのか?

「じゃあ、マキちゃんにわかってもらえるように、もっと頑張る」

そう言って魔王は私の首筋に頬をすりつけた。
頑張るってなにをどう頑張るんだ。

「こうやって…」

魔王の手が、私の肩を撫でた。
くすぐったくて、身をよじる。
その手が、どんどん下へおりていく。
胸の谷間を通り、お腹へ到達する。

服の上からでも伝わるその手の感触が、私を刺激する。

「や、めてよ」

くすぐったくて、声が震える。
昔からくすぐりには弱いんだ。
特に動いてるわけではないけど、やっぱりくすぐったい。
笑いが込み上げる。
それを抑えようと息を止め、お腹に力を入れるが、小刻みに震えるのを耐えることはできない。

「…っく、……っ…ちょっ…」

やめてと叫びたいが、きっとそれをすると、せきとめていた笑いが溢れ出るので、できない。
手で押し返そうとするが、手に力が入らない。

「まお…ほんっと……やめ…」

最早涙目で魔王を見上げる。
すると、驚いたことに、魔王は顔を背け、空いてる手で口を抑えた。
もう片方の手も、動きを止め、私は大きく息を吐いた。
深呼吸して、動かない魔王の手をお腹から退ける。
それでも、反応を見せない魔王を再び見上げる。

「……魔王?」

魔王の顔は、隠されてて見えないが、一つだけ確認できた。
耳が赤い。

「…どしたの?」

「………やばい」

魔王の口から小さな声が聞こえた。
が、なにを言っているのか聞き取れない。
なに言った?こいつ。

「……は?」

「………もしかして、理性、試されてる…?」

「は?」

ぽつりと呟いた魔王の声は途切れ途切れにしか聞こえなかったが、その声は何かを堪えるかのようにのように苦しそうだった。
魔王はそれ以上はなにも言わず、固まってしまう。

「……はぁ」

やっぱり、魔王の考えることはわからない。