「つっかれたー!!」

サクヤがまるで電池の切れたおもちゃのように草むらに倒れ込んだ。
夜中まで動かし続けた体は、あちこちに小さな傷がある。

「あー、冷たい。気持ちいー」

僅かに夜露に濡れた草が疲れた身体に染み渡るようだった。

「サクヤったら、やりすぎですわ…」

「………寝る」

「待て。食事はいいのか」

サラサはサクヤの右隣に座り込み、ミリアは左隣に倒れ込んだ。
今にも眠りにつきそうなミリアの肩を揺らすカレンも、その顔には披露の色が読み取れる。
三人の身体は限界だった。

しばらくすると、ミリアから穏やかな寝息が聞こえ、カレンはその場に座り込んだ。

「……お腹減ったー…けど、食う気力ねー」

喉から絞り出すような、掠れた声でサクヤは呟く。
サラサもカレンも小さく頷くだけで精一杯だった。

「サクヤ…私、もう……」

「姫、このままお休みになるのは…」

「……あー…結界…張っとく。カレン…ごめん。寝かせて…カレンも…寝ていー…よ…」

サクヤが地面に手のひらを押し付けると、そこを中心に風が通った。
うまく結界が張られたようだ。
それを薄目で確認したサクヤの意識は深い闇に吸い込まれていった。

サラサも眠りにつき、意識があるのはカレンだけとなった。
そのカレンも次第に瞼が重くなり、その体制のまま眠りについた。


『グルるるる』

サクヤが目を覚ましたのは、その唸り声と刺すような殺気をその身体に受けた時だった。
ばっと起き上がり、辺りを見回すと、すぐにその正体を知ることとなる。

ウルフレンである。

ウルフレンは、鋭い牙と強靭な体を持つ、獰猛な魔獣として有名だった。
その群れが、結界を囲っていた。

頼りの結界も、数々の攻撃に耐え、今にも消えてしまいそうなほど弱まっていた。

こないだ決意したばかりなのに、こんなたくさんの殺気の中で寝ていたなんてと、サクヤは舌打ちしたいのを堪える。
すぐに三人を起こし、自身も剣を抜く。

「まさか、こんな…!」

「……多い」

「私としたことが……不覚!」

三人は、寝ぼけた頭を瞬時に目覚めさせ、戦闘体制をつくる。

「ごめん。俺も油断してた……結界が壊れる!!」