「炎の化身サラマンダーよ。今こそその力を我に与えたまえ。

ファイヤーエポンド!」

少女の口から呪文が唱えられ、魔法陣が光を放つ。
それによって、今まで魔物がいたところは一瞬で炎に包まれ、後にはドロップアイテムと焦げた地面が残った。

「ミリア、すごいね。一撃必殺だ」

手拍子をしながら、サクヤは近づいく。
ミリアは視線をサクヤに移し、嬉しそうに微笑んだ。
しかし、サクヤの心はパッとしない。
自分が随分と非力に思え、ギュッと拳を握る。
そのことを紛らわすように、わざと明るく口を動かす。

「これじゃあ、僕なんか必要ないんじゃないかな?」

「そんなことない」

「そうですわ!サクヤは必要です!できれば、一生一緒にいてほしいくらい…」

二人が勢いよく否定の言葉を並べるが、サクヤの心は晴れない。
このままで良いのだろうか?と、サクヤの心に疑問が浮かぶ。

「魔王は聖剣でないと倒せないと言われている。ミリアの魔法ではダメージは与えられても、とどめをさすことはできないだろう。そうすると、サクヤ抜きではこのパーティーはただ、命を捨てに行くだけなのだよ」

カレンの重い言葉にサクヤは唾を飲み、心は、決心を強めた。

「…俺、もっと頑張るよ」

「サクヤはもう充分頑張っていますわ。無理をしないで。
私たちも、少しでもお役に立てるよう、鍛錬に励みますわ」

サラサがサクヤの固く握られた拳をそっと両手で包み込む。
その優しい笑みと、言葉に固くなったサクヤの表情に、笑みが戻った。

「みんな…頑張る…!」

「そうだな。そして、目指すは打倒魔王だ」

「ああ!頑張ろうぜ!」

目標を再確認した皆の心に迷いはなかった。
彼らは、再び魔王城を目指して歩き出した。