あたしは思い切り、彼女の頬を平手打ちする。
ぱしん、と乾いた音が辺りに響き渡った。
「持ち上がり組のプライドだか、アンタのヤキモチだかしらないけどねえ、そんなモンに振り回されてやる程あたしは暇じゃないの!」
頬を押さえて呆然と立ち尽くす藤崎さん。
構わずあたしは言葉を続ける。
「文句があるなら真正面から来なさいよ!入学式の後のあの一件以来ずっとそう!アンタはいつも陰でこそこそやってて正面から来なかった!」
我慢していた鬱憤が、ここに来て一度にあふれ出す。
「向かって来んのが怖いぐらいならやるな!あたしはあたしで一生懸命真颯選戦ってんのよ!あんたのそんなしょうもない事情で邪魔されてたまるか!」
「…成田さん、」
声を挟んだのは中原くん。
何よ、邪魔しないでくれないかな。
「ここじゃ、それ以上やると余りに目立ちすぎる」
言われてはっとする。
校門の真ん前で、女同士の怒鳴り合い。
ものっすごい目立つことこの上なく、通る生徒が皆何事かと思ってるのがよく分かる。
…しかも、あたしタスキ付けたままだし。
