「待って待って待って、乗りますっ!」
階段を一段抜かしでかけ登り、電車へと身体を滑り込ませる。
あー…喉の奥が痛い。肺が全力で呼吸してるわ。
でも、あたしの手の中にはまぎれもなくUSBメモリーが握られていた。
これと、ファイルを今日押し付けてやったら高津遥のヤツどんな顔するんだろ。
あの有り得ない文章量、一晩で形にしてやったわよ!
あたしはちょっと勝ち誇った気分で学校へと向かう。
「おはようさん」
「おはよ、真澄!」
「何や、機嫌ええなあ」
「今日こそあの高津遥をギャフンと言わせてやれるからよ!」
「遥を?どしたん?」
「ちょっと、色々あってね…ふふふ、」
「麻架はホンマ真颯会やら遥の相手やら同時進行って器用やなあ…」
「好きでやってんじゃないの、後者は」
あたしも出来るなら真颯会に集中してたい。
二兎を追う者は一兎も得ず、あたしは複数を同時進行させれる程器用じゃない。
これっきり、高津遥とは妙な腐れ縁たたっ切ってやるんだから!
