父さんは、優しい人だ。
忙しい身で、普段顔をあわせない子供の誕生日を忘れたりしない。
不器用だけど、愛情を持った人。
その父が、毎日、毎日、仕事の合間に、
決して目を開けない母のもとへ行って、言葉をかけることもできずに、座っていることを知っていた。
弟の康介も、優しいやつだ。
現実から逃げようとする僕を気遣って、決して放そうとはしない。
お節介だけど、優しい人。
その弟が、毎日、毎日、放課後に、
決して笑ってくれない母の病室に花を飾って、たくさん話しかけていることを知っていた。
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