父さんは、決して冷たい人間ではない。 不器用だが、優しい人だ。 大人になればなるほど、表面に出ていなかったそういう部分が、感じとれるようになった。 ため息をついた僕の膝に、クロは座って、僕を見上げていた。 “心配でもしているかのように”というのは、僕の過信かもしれない。 でも聞いているかもしれないと思って、クロに皮肉ったように笑いかけた。 「あのね、クロ、今日は僕の誕生日なんだ。」