「お姉ちゃんって呼んでね。」
優しそうな人だった。
母親が誰かの愛人だということは、親戚の誰だったか・・・・聞いた。
どこにいても誰といてもぽっかりと浮かんだ存在である自分。
その人の顔は穏やかで、いつも何かに責められているような自分を全部許してくれるようなそんな錯覚をおこさせた。


女と暮らすのは、母親でなれていたはず。

ぜんぜん違う。

子ども扱いして頭をなでて来るとき。
風呂上りの髪をそのままにすれ違うとき。

俺は壁ひとつ隔てた向こうに自分を振り回す存在がいることに困っていた。

中学に入ると告白してくる女子が増えてきた。
「おんなくさい・・・・・」
友達にそういうと
「ケンカ売ってんのか?」
と笑われた。

夏休みの部活の後。
剣道部の先輩の家におじゃました。
まあ、よくあるAV鑑賞会。
みんな軽口をたたきながら、もぞもぞとしつつ。
笑いながら帰り、俺もなんということもなく帰った・・・・はずだった。

異変は夜中に起こった。
夢の中で、俺は誰かをだきしめていた。
昼に見たAV。
『夢だ』
と思った瞬間に、女の顔はあさひになった。
『夢だから』
『夢だから』
夢中で行為に没頭した。
朝起きて、
「なんてことをしたのか」
と汚れた下着をこっそり洗い、洗濯機にいれた。