どんなに治療しても無理なんだって

でも意外と心は冷静で目を閉じている大樹に話しかけてた。

自分が思っていたよりももっと静かな声だった。

私は、明日は大樹の好きなあのプリンを持ってくるねとか、今日あのテレビが面白かったよとか、いつものように話してた。


もっと取り乱すかと思ってたのに。

意外と冷静な自分に驚いてた。

大樹はもう答える気力もないのか時折私の手を弱く握り締めるだけだったよね。

そのたびに胸が張り裂けそうになるほどの切なさがこみ上げてきた。

でも私なんかが泣いたって大樹の寿命が延びるわけでもない。

大樹が動けるようになるわけでもないって思ってひたすら残された時間を二人だけで過ごした。

過ごした時間はほんの数十分だったけれど、私には何時間にも思えたよ。

いつしかお医者さんが来て、大樹の体をいろいろ調べて悲しそうに言ったんだ。




お亡くなりになりましたって




それを聞いた瞬間、大樹のお母さんと一緒に声が枯れるくらい泣き続けた。

そのあとのお葬式には本当に驚いたよ。

大樹のお葬式にはびっくりするくらいたくさんの人が来てくれた。

私の知らない人たちばかりだったけどみんなみんな泣いてくれてたよ。