ロベルタの両親は自然が大好きで、この村へ引っ越し、娘のロベルタは現在もそれについて不満を大きく抱いていた。

「選ばれるのはこの私なの!ユーリなんて勝負をしても意味はないのよ!」

 散々言いたい放題に言って満足したロベルタは踵を返し、村を出て行った。
 一人残されたユーリはどうしようと悩みながら、ひとまず家へ帰ることにした。ユーリは家に帰ると、さっそく今日の出来事をおばあちゃんに話した。

「そういうことなの。おばあちゃん、どうしたらいいと思う?」

 話を聞いていたおばあちゃんがにっこりと笑いながら、ユーリに話しかけた。

「ユーリ、この世に食べ物は数え切れないほどあるわ。私達も今まで生きてきてたくさんの食べ物を食べてきたけど、全てを食べ切ることはできない。あなたはあなたができることをすればいいの。お母さんにもそう言われ続けてきたでしょう?」
「言われた」

 目を閉じると蘇る懐かしい記憶。ユーリにとって大切なこと。

「お母さん、お腹が空いた」
「あら、もうこんな時間ね。ユーリ、一緒に作りましょう」
「私、何を手伝えばいい?」

 お母さんは細い指先を口元に当てて、少し考えてから卵とボウルを渡した。

「まずは卵を割ってくれる?」
「まかせて!」

 お母さんの邪魔にならないところで卵を割ると、卵の殻も一緒にボウルの中に入ってしまった。
 どうしよう、殻を入れてはいけないのに。

「あ!」

 ユーリの叫び声にお母さんは振り返り、娘に歩み寄った。

「どうかした?」
「これ・・・・・・」

 ボウルの中を見せると、お母さんは私の目線に合わせた。

「心配いらないよ。これはスプーンで取ることができるから。見ていて」

 スプーンをボウルの中に入れ、そっと殻を取っていった。

「すごい!」

 ユーリが大きく目を開けてみていると、ボウルの中は殻が取り除かれて卵を綺麗にパカッと割った状態になっていた。

「お母さんもね、小さい頃はよく失敗したの」