できるだけ痛くない場所を彼に伝えた。

「わかった。ゆっくりと吸ってやるよ。死なせはしないから安心しろよ」

 彼の牙が見えた。皮膚に牙が入っていく。
 今日も私は必死に痛みに耐えながら、彼に血を捧げてしまう。


「ん・・・・・・」

 いつの間にか眠っていて、私はベッドに寝かされていた。

「私のベッドじゃない」

 見慣れないベッドだった。知らないところだった。
 起き上がろうと試みたが、今の私は座ることも立ち上がることもできなかった。
 どうしたものかと考えていると、ドアが開いた。

「やっと起きたな。いつまでも俺のベッドを占領しやがって」

 光輝はえらそうに腕を組みながら文句を言った。
 起きてすぐに文句を言われるとむかつく。
 まだだるさが残っていてすっきりとしない。

「ここってひょっとして・・・・・・」
「俺の部屋だ。そういえば初めて入れたな」

 部屋にはベッドと机などが置いてあって、無駄なものが全然ない部屋だった。

「ほら、さっさとどけよ」
「だるくてどけない。喉も渇いた」
「何だよ、俺の真似のつもりか?」
「そうじゃないよ」

 ずっと走っていたから何も飲んでいない。
 勢いをつけて起こそうとしたが、そのままベッドから落ちた。

「何遊んでいるんだ?」
「遊んでなんかいない!」
「しょうがないな、なんか持ってきてやる」

 そう言い残し、部屋から出た。

「その前にベッドに戻して」

 そう言ってもドアは開かなかった。
 何とかベッドへ這い上がり、天井と睨めっこをしていると、光輝が麦茶を持ってきてくれた。麦茶を受け取り、飲むとすぐに喉を潤すことができた。

「光輝、私のどこが一番美味しいの?」
「何だよ?いきなり」
「いつもあちこち私の血を吸っているからどこがいいのかなと思ったの」

 お茶を飲んでいるときにふと思った。
 じっと返事を待って、しばらく沈黙したあと、私からグラスを取り、机に置き、私に顔を近づけた。
 ゆっくりと首筋を撫でてくるので、呼吸が荒くなり、熱が上がっていく。

「本当にわからないのか?」
「わからない。どこなの?」
「今から教えてやる」

 一瞬思考が停止したが、すぐに唇を塞がれた。キスをされている時間は長く、息が続かない。
 ドンドンと背中を叩き続けていると、ようやく呼吸ができるようになった。

「俺とキスをするのは嫌か?」
「はい?」
「正直に言え。どうなんだ?」

 言葉にしなくては彼に伝わらないことくらいわかっている。
 だから私は正直にいうことにした。

「嫌に決まっているでしょう!馬鹿吸血鬼!」
「なっ!てめっ!」

 両手を拘束された状態で睨みつけられた。

「キスをしている間、可愛い顔をしているから吸わないでおこうと思ったけどやめだ!覚悟しろ、痛く吸ってやるからな!」
「嫌!もうお腹は満たされたでしょう!?」
「まだ足りない。動くな」
「痛い!」

 結局私は長時間、血を吸われ続けて、その間は無駄な抵抗をし続けた。
 それから二度目の眠りについた。