私たちはいつから、気持ちがすれ違っていたんだろう。

もしかしたら、いくつも、道端の小石のように、そのきっかけが転がっていたのかもしれない。

それを蹴っ飛ばしたり、踏んでしまったり、無視したりして拾い上げなかったから、今こうして後悔が浮かぶのだろう。


「お前後輩にさ、早とちりすぎるとか、言われてるんじゃねえの?」


悟りきった顔で、彼の親指が私のまなじりをなぞっていく。


「知った風な顔して、なにそれ。私はきちんと仕事はしてますよ」

「仕事は? じゃあ、それ以外は早とちりすぎるの、認めるんだ」


揚げ足を取るような抑揚で彼は笑う。

片側の口角が上がり気味のニヒルな、色気の中に幼さが残っている顔。

その幼さは、いじめっ子が魅せるものに似ている。


「自分はどうなのよ。回りくどすぎるとか、言われてるんじゃないの?」

「言われてるかもしれねえな。俺の知らないところでは―――これでも一応、優良社員で通っているけどな」

「さぞや、おモテになるのでしょうね」


素直になれない、裏返しの言葉が口をつく。