彼も私も仕事が優先になってしまっていて、せっかく予約を入れても時間を守れない。

飲食店でまちぼうけをくらうのは精神的にダメージが大きいということで、珈琲ショップを待ちあわせ場所にすることがほとんどになった。

しかし今日は彼から「中間地点の公園」という指定が入った。

その意味を今まで考えなかったこと、なんて私は浅はかだったのだろうと、隠しきれない動揺が呼吸を浅くさせる。


「あの、さ」


ためらうような彼の口振り。

切り出される言葉が恐い。


彼はもう一度携帯灰皿で火を消して、それを懐に入れた。


「俺、今まで仕事ばかりしてきて、それはナツナも同じだったよな。それでいいと俺も、思っていたんだけど―――って、え?」


振り返った彼の瞳は、今夜の月のようにまん丸になっている。


「な、なんで泣いてんの?」

「だって―――」