「若いもんを見ていると、恋したいなって、思うときがあって困る」
「若いもん?」
「そう。新卒くらいから入社二年目くらいのヤツとか」
私たちは大学に入りたての頃からつきあっていたはずで、そのまま八年以上のときが経っている。
私たちは、つきあって、ない?
こうして待ちあわせをするし、互いの部屋を行き来もするし、休日をともに過ごすことだってある。
性行為も、もちろんある。
そういった関係は、彼の中で「恋」と呼ばれるものではないのだろうか。
彼は私に背を向けて、水がたゆたう様を見ている。
おもむろに懐から煙草を取り出して、溜め息を零すように紫煙を吐き出した。
その背中に、どうして今日は公園だったのだろうという疑問が浮かんでしまう。

