こいのはなし



「買うとき、緊張したでしょ」

「そりゃあなぁ、日頃行かないところだしなぁ。でも、ナツナの嬉しそうな顔を見て、ほっとした。ちょっと俺、必死だったから」

「必死?」

「そうそう」


彼の薬指に指輪をはめ進めていく。

どうやら私の指がくすぐったかったようで、手がもぞもぞと動いた。


「おそろい、ペアリング!」


自分の左手と彼の左手をぴったりあわせる。

同じ薬指という位置で煌く光に、満足感を覚える。

これで密かにモテる彼の、職場女性へのけん制になるだろう。


「お前さ、また早合点してるだろ。俺これ渡すの、すっげー緊張したのに」


それで片づけるなと、彼は言う。

ずっとそわそわして落ち着きがなくなることがわかっていたから、いつものカフェではなかったらしい。