こいのはなし



「ごめん。本当はこれ、渡したかっただけ」


私の薬指に、一筋の光が留まっている。

夜空に手をかざしてみると、星と同化するような輝きだ。

おおう! と思わず感嘆が漏れて、今までの気持ちが一瞬にして霧散した。


「だから、早とちりだって言ったじゃないか」


気に入ってくれたようでなによりだと、彼は安堵したようだった。


「これって、ペアじゃないの?」

「お前が、はめてくれるか?」


どうやら自分の分もあったらしい。

彼は通勤バッグから箱を取り出した。

飾り気のない藍色の、宝箱のような形状の箱は、手にしっくり馴染むくらいに重かった。

その中からおそろいの指輪を取って、私は彼の無骨な左手を取る。