月と蝶との秘密の糸


コツコツと規則的なヒールの音が静寂な部屋に響く。


広すぎる部屋だわ。


ほとんど私とシャイナーとエドワードしか使わない。


シャイナーはただ寝るだけの部屋だもの。


私とシャイナーは夜しか会わない。


朝、冷たいシーツの中で私はいつも寝ている。


嘘の声をだし、嘘を演じきる。


それが一番良いと思っている。



ガチャ



書斎のドアノブを回す。


真ん中には小さな丸い机。


そこには王室の図書館から借りてきた本が2つ重ねておいてあった。


「あら、昨日借りて読んでなかったままだったわ。」


手元にある


『愛とは五感で感じるもの』


の本よりもずっと良い本だと思う。




愛なんて……求めてないわ。




強がりな台詞(セリフ)ね。


私は取りあえず手元にある本を机の上にある本の上に重ねた。


「明日で読み終わらせよう。」


そう呟いて書斎から出た。