*政略結婚*

「…急にどうしたの?急ぎで伝えたいことがあるなんて、切迫詰まった声で留守電に入れて。
何かあったのかと慌てて来てみたけど…」
由香は、少し息を切らせながら父の正面にあるソファーに腰を卸す。
父は、強ばった表情から一向に解けない。
由香は、本当に何かしらの危機に遭遇したのかと、同じように緊張の面持ちをする。
そして、意を決したように、俯いていた顔を上げた父は、ゆっくり口を開く。
「…お前に、頼みがある。」
「頼み?」
「そうだ」
「…父さん?」
由香は、あまりにも力無く言い放つ父に、嫌な予感が頭を過ぎる。
「………お見合いを受けて欲しい」
「…え?お見合い?」
「ああ。頼む!お前しかいないんだ!」
父は、ガバッとテーブルに両手を付くと、頭を下げ言い放つ。
由香はなにが何だか分からず、困惑する。
「ちょっ、父さんっ?
いきなり見合いしろなんて言われてもっ、理由を説明してくれなくちゃ分からないわっ!
何がどうしてそうなったの。」
父に近寄り、頭を上げるように促しながら説明を促す。
「…実は、父さん…な。
借金を…作っていたんだ」
「…借金?どうしてまた…、いえ、それもだけど、…幾らなの?」
「…一億」
「一億っ!!何に使ったのよっ!そんな大金!」
由香は、あまりの金額に絶叫する。
そんな大金叩いて買ったものなど、身近にはないはず。
何に使ったのか。
「使ってはいない、父さんは、会社の同僚の保証人になっていたんだ。」
「保証人?」
「ああ。
そいつは、人脈も厚く、信用出来るやつだと思って保証人になった。
だが、一ヶ月前あたりから、連絡が取れなくなって、借用会社から連絡が来た。
借金が返せないと、本人から連絡があり、それから連絡が取れないから代わりに払ってくれと言われて。」
「…そんな、」
「…父さんも、どうすればいいのか分からなくなってな?
一億なんて大金。
期限迄になんか返せやしない。
それで、いつも贔屓にして頂いてる、ある大企業の総帥に会って、相談したんだ。
そうしたら、総帥が、ある提案を持ちかけてくれてな?
お前と同年代の息子と、結婚すれば、借金はすぐ返済出来ると。」