「解ってる。癒麻ちゃん、俺から離れないでね。」
 「はい…。」
 癒麻の手をしっかりと握り、悟は所定の位置に立った。
 (…あの子の名前『かつらぎゆま』と言っていたな…。
 まさか桂木夫妻のお嬢さんか…?)
 五十嵐警部は壁に背中を預けて、悟の隣に立つ癒麻をジッと見ていた。
 (まあ、桂木夫妻の娘でも関係無いか…。
 悟があの子を好きになっちゃいけない理由なんてどこにも無い…。)
 五十嵐警部が下を向いて小さく笑うと、会場がざわめきだした。
 『お集まりの皆様、大変長らくお待たせいたしました。
 会長のご到着です。』