癒麻の背中には右肩から左下に向かって大きな走り傷があった。
(なに…?あの傷…。なんで癒麻ちゃんの背中にあんなものが…!?)
その時、呆然と見つめていた悟の視界から癒麻の姿が消えた。
「樹…。」
悟が隣を見ると、少し辛そうな顔をした樹がいた。
「…癒麻のことを想うなら、癒麻には何も聞くな…。」
樹は小さく呟いた。
「え…?」
「聞きたいなら俺が答える…。
だから、癒麻には何も聞くな…。」
(…。)
その時の悟の脳裏には先程の癒麻の背中と、以前に癒麻が見せた辛そうな表情を思い出していた。
「……。解った。聞かない…。」