目の前の電柱と、樹の袖を引っ張る癒麻。
樹の脳裏には一つの答えが浮かんでいた。
(もしかして、ぶつかりかけたのか?
なんてベタな…。)
「あ…、悪かったな…。癒麻…。」
カッコつかないことに、樹は癒麻から視線を外す。
「なにかあったの?樹…?樹が考え事しながら歩くなんて珍しいじゃない…?」
癒麻は心配そうに樹の顔を覗き込む。
「なんでもねーよ。」
樹は先に歩き出す。
「でも…。」
心配そうな顔をする癒麻を見ず、樹は先に歩く。
「待ってよ、樹…っ!!」
癒麻は急いで樹の後を追う。