「……。」
生徒が賑わう正門の前に、一台の黒いベンツが横付けされる。
正門に入ったところで、悟は横付けされた車を見ていた。
運転手らしき中年男性が車を降り、反対側の後部座席に回り車を開ける。
そこから降りてきた人物を見て、悟は驚きの声を上げる。
「樹!?癒麻ちゃん!?」
悟の声に樹が顔を上げる。
「よお。」
「おはよ。悟くん。」
樹は右手を上げて、運転手に話しかける。
樹の後から降りてきた癒麻が悟に、笑顔で挨拶をする。
「帰りは後から電話する。それまで来なくていい。」
「はい、かしこまりました。樹様。」