影がゆっくりと、癒麻に近づく。
『……っ!』
癒麻は何故か恐怖を感じていた。
逃げようとしても逃げられない。
近づく影に、癒麻は立ちすくむだけだった。
『……っ!!』
影が近づき、影が手を差し伸ばす。
『い…や…。』
癒麻は、ようやく声が出た。
手だけが、影から元へと戻る。
差し伸ばした手が、さらに恐怖へと導く。
差し伸ばされた手…。
『い…や…っ!!』
癒麻は、自分の体を抱きしめる。
手が癒麻までとどき、癒麻の肩に届く。
『……っ!!』
その手が、軽く癒麻の肩を突き飛ばす。