「どうだい?
 周りなんか気にしないで
 安心して食べれるってのは、」


「ああ・・
 それはそれは格別でしたよ。」


そう言って、彼女は嬉しそうな顔をした。


「残念だけど・・
 もうお別れだよ。」


僕は部屋の鍵を開けながら言った。


「・・そうですね、
 奥さんによろしく言っておいてください」


「・・うん、言っておく。」


僕はドアノブを握ったまま、

彼女は僕を見つめたまま、

しばらく沈黙が続いた。

・・そして、二人して笑った。


「・・今までありがとうございました、
 私は幸せでした。
 楽しい人生でした。
 あなた達の家に迎えられてよかった。」


「・・僕も、
 君が家に来てからは
 妻と2人で楽しい時間を過ごせたと思う
 ありがとう・・」


僕がそう言うと、

彼女は何も言わずに笑った。

その笑った顔が、

うちのシマウマに似ていた。


「それじゃあ、お元気で。」


そう言って、

彼女はその場を後にした。


それから僕もウチへ入って

妻がむかえる、我が家の暖かさを感じた。


・・これから彼女は、

どこへ向かうんだろうか。


僕に行き先も告げずに、

まるでどこかへ帰るかのように・・。


一体、どこへ逝くんだろう。


彼女の家は、

ここだというのに。