第2章。

「少し、飲みませんか?」


そう言われて、僕はかなり動揺した。

正直、女性に誘われたことなんてなかったし

一瞬で全身が緊張した。


「・・いいですよ、どこ行きましょうか」


「そうですね・・・
 とりあえず探してみましょうよ」


そう言って彼女は、

僕を先導していった。


さっきまで沈んでいた彼女とは違い、

別人のように明るい。

きっと彼女はさっき、

僕が泣いたせいで元気がなかったんだろう。

バスの中の彼女はなんとなく沈んでいた。


彼女を見れば見るほど

うちのシマウマちゃんを思い出す。

数日前まで元気にはしゃいでいたのに、

つい先日ぽっくり逝ってしまった。

小動物の命というのは、

とても悲しいものだ・・・

急にあっちの世界のお迎えがきてしまう。


「こことか、どうですか?」


そう言って彼女が指差すのは

居酒屋でもなんでもない、

立派なレストランだった。


「いいけど、時間は大丈夫なの?
 もう9時も過ぎてるのに・・」


「平気ですよ、
 ここからウチまでそう遠くないので、」


そうして彼女に続き店内に入ると、

油のいいニオイがして

猛烈に腹が減っていたことに気づいた。