「ちょいまちぃや」


「……なんだよブ………」

男は、ゆっくり止まると、私にそう吐く……が最後まで、続く事はなかった


私の肘が顎を直撃していたから


「ぐはっ…!」

男は派手な音をたてながら後方に倒れる


「……ライ様……」

「……ライ」

突然の事に二人も唖然とする


「っ………このアマァ!?」

キレた男は、私に向かって拳を左側から投げてよこすも、瞬時に避けた私には当たらず、代わりに私の足蹴りが腹部に食い込む


「っ、ぐ!」


どさっと重い音が広がる

「ぐほっ……!」

口が切れたのか、血液混じりの唾液をながす

「女の体を……売りに出すだと?まだ、毛も生えそろってねぇくそガキがぁ、嘗めた口きいてんじゃねぇんだよ」

「ぐはっ…!」

腹を再度蹴り倒す

「いいかい坊っちゃん、世の中、うまく知らないうちに権力使って馬鹿なことしてると、逆に自分が身売りされるよ?」

「はっ……!」

「声出ないだろ?肋骨第2第3軽く折らせてもらったよ?大丈夫。複雑骨折じゃなくて綺麗に横向きで割れ目入れたから、肺には刺さらない。無理な動きすれば刺さるけど……

いいかい?金輪際、二人に関わるな。私なら何時でも相手になってやるから。

因みに、馬鹿な考えおこすんじゃないよ?その時は………」


「………ひっ!」

男の耳に囁きかける


《あんたの体……バラバラにして売るよ?》


と………


男はみるみる真っ青になる

「いいね?」

コクコクと何度も、縦に首をふる

「よし。……行こう。祐貴子ちゃん」

「は、はい」

まだ放心状態の祐貴子の手をとり、その場を離れる

「千夏ちゃんも……いつまでも座ってないで立つ」

未だに床に座りっぱなしの千夏にも、ゆっくり声をかかける


「は、はい」

千夏も、力なく応えた


二人の手を引き、ゆっくりと教室に戻る道を歩く


「あ~、そうそう。迎え、携帯あるんでしょうから、仲間呼んで来てもらいな?

ここ、一応男子は禁止校舎だから、センコーに見つからないうちにねぇ――?」


私は、歩きながらそう伝えた。