崖を背にして二人が並んだ。



「じゃあ始めに、しりとりのテーマを決めて……『食べ物』とか『動物』とか」




「『動物』でいいわ」




「そう。じゃあ、僕から言うね。あ、後……後ろを振り返るのはナシ……反則負けにします」



「わかったから、始めて」




こうして、二人は命懸けのしりとりゲームを開始する。





「じゃあ、なるべく少ない字数で……『クマ』」




そう言って、答えの字数分の二歩を後ろに歩く眞幸……。




「『マントヒヒ』」




「エッ……ちょっと、いきなり」




驚く眞幸に気を止めることなく、彩火はスタスタと躊躇なく追い越してゆく……。




当然、後ろに進む方が崖へと近づく……が、後ろを振り返れず相手を確認出来ないことが、眞幸を不安にさせる。




「さあ……早くしてくれない」



彩火が眞幸を急かすと……




眞幸は、何故か悔しさを顔に滲ませた。




「ヒ……ヒ……『ヒツジ』」




眞幸が大股で、三歩進むと、あっさりと彩火を追い越していた。




「ちょっと……同じ五歩なのに、どうして先に行ってるの」




「別に……歩幅は本人任せだからね。城田さんがビビってるんじゃない?」




「なっ……」




思わず振り返りそうになる彩火……言葉を止めた口許を、怒った様にプクッと膨らませていた。




二人のゲームは勝敗を度外視し、意地の張り合いへと様相を変えてゆく……。