夏の気温と共に上昇するアルファルトの温度を全身に感じる。

焼き焦がしてやろうかと言わんばかりに太陽がじりじりと照りつける。

何故こんな季節に屋上にいるのかは、ただ単に教室がうるさかったから。

だからといって私が移動するのはしゃくだったが、いつも一緒に行動する他二人は屋上に行きたいと言うため仕方なく来た。

その二人は先ほど弁当を食べ終え教室に戻ろうと言ったが、私はそんな気になれなかったので、予鈴が鳴ったら教室に戻ると言って一人で寝転がっていた。

7月と言えば、夏休み目前で皆気分も浮くだろう。

それに夏休みは何をして過ごそうかとか、宿題の愚痴とか。

生憎私にそんな女子高生らしい話題はない。

夏休みはずっと病院で過ごすのだから。

私が生まれた時から持っていた大変迷惑極まりない『持病』。

軽い喘息だと思われて検査を受け、蓋を開けてみれば心臓を移植しないと直らない病気なんだとか。

それを聞かされたのは小学校1年生の時。

何故か他人事のような気がしてどうでも良くなったのが本音。

私は周りのことに興味はなく、それは自分に対しても同じ。

自分が近い内に命を落とすことになる、と言う医者からの宣告を聞いた年齢一桁の少女が放った言葉が「あ、そうですか。それまでお世話になります」だったら、誰だって驚くだろう。

この世から消えて無くなるなんて怖くないと思っているし、常に思い残すことはないように生きている。

友達とも極々普通の学校生活を送っている。

誰かとわだかまりがある訳でもなく、困ったこともなく、ありふれた普通の生活を。

それはつまり、平和であると同時に退屈であるということ。

それなら死んでしまった方が楽なんじゃないのかと思ったが、自ら命を絶つのは漫画などで虐められたキャラがする愚行だと思って諦めた。

どうせもうすぐ死ぬのだし、ならば残された時間は有意義に使おう。

そろそろ熱さに耐え難くなって体を起こそうとしたが、太陽が移動して今居た場所が日陰になり、快適な空間と化した。

そうなってしまえば起きあがる必要もないだろう。

一度そう言う考えが浮かんでしまうと、行動力は一瞬で音を上げて藻屑となり散っていって、起きあがるのが億劫になる。

午後は体調不良で保健室に行ったとでも伝えてもらおうかとサボリの計画を企て、そういえば後何回授業欠席したら休み扱いだろうかを今日の日付から逆算し始めた所で、少し陰が暗くなった。

誰かが頭の上に立っていることは容易に想像できた。

暫く無視して目を閉じ続けていたが、起きないと判断した向こうから声をかけてきた。

「おーい陽風ー授業サボる気だなー起きろー」

「ほら愛しの西沢が起こしに来たぞ!おきろ陽風!」

私は渋々上体を起こし、今からまさに眠ろうとしていた私の妨害をした二人を睨む。

「おわぁひーちゃん睨まないで!可愛い顔が台無しだよ?」

まずは一ぴ………一人目。

ドッグテールで性格も犬のような彼女は私の昔からの友達。

名は瀬能 李々。

他人にも自分にも興味のない私がつるむ人間など多くは無いが、それでも一緒にいると気が紛れる。

「ほら、折角の綺麗な髪がボサボサだろ……おいで、とかしてやる」

もう一人、不本意ながら私にとっての恋人と言う名目に当たる西沢 漸。

顔もよく、運動も出来るし成績優秀。

『文武両道はこいつの為にある』といった表現は良くあるが、過言ではないと思う。

漸には、高一の時告白された。

早死にすると分かっていた私は一度断った。

理由を気かれ病気のことを伝えると、ならせめてその時まで一緒に居させてくれと言われ、了承した。

ここだけの話、実は私も漸は気になっていた。

本人に言うと調子に乗るので絶対に言わない。