呼吸が苦しい。

自分の息だとは思えないような病的な呼吸音。

流石にこれだけ走れば喘息も再発するか。

肺が破裂しそうだ。

でも私は止まるわけには行かない。

今私がここにいるのも、ここにいようと思えるのも、全部あの子のお陰だから。

友達なんてどうでもよかった。

病気になろうが、それこそ亡くなっても気にしなかった。

そう思うことがどれだけ馬鹿馬鹿しかったことか!

私は走る。

家から徒歩では少し遠い丘の上。

彼女が居た場所へ。

否…………………居る場所へ。

交差点の信号を渡った辺りで、何故こんなにタイミングがいいんだろう、凄まじい土砂降り。

深い水たまりも気にせず走る。

どれ位走っただろう、そろそろ丘の麓が見えてきた。

今の私の状態ではあの短いが急な坂を登るのは少し苦痛だが、もうなりふり構っていられない。

殆どは草だが、その下の土は雨でぬかるんでいた。

それすらも気にせず泥に足を突っ込む。

跳ねる水で濡れて冷たくなったソックスが足を冷やし、感覚がない。

それでも今私は生きている。

だから脳に命令する。

足が動く。

呼吸できる。

ただひたすら前に進む行為。

あの子はそれすら出来ないんだ。

それを思うとこの程度、何の苦痛にもならない。

早く早く、頂上へ。