「すき」だらけ

その男の子はあたしの隣にしゃがみこんであたしのお経をじっと聞いていた。

その時、その子の真剣な目がすごく大人に思えて突然怖くなった。でも同時に少しだけ目が離せなくなった。

この気持ちはなんだろう?

結局その男の子とはそれっきり話せなかったけどずっと気になってた。

でもそれに気づかれるのが怖くて。


だからお父さんが写真を撮ってくれるって言ったときも1人だけ少し離れたところから動かなかった。



その男の子が帰るときに

『また会いにきてもいい?』

とあたしに問いかけた。

怖いよ。

なんだかこの男の子といたら不思議な気持ちになる。

だからあたしはそれを思いっきり口にしたんだ。


『怖いんだもん。だからもう会いたくない』

その言葉で男の子がすごく悲しい顔をしてた。あ、あたしもしかして傷つけた。



謝らなくちゃいけないのに何も言えない。

ただ帰っていく後ろ姿を黙って見送るしかできなかった。