自分は母親に捨てられた。


周りの子が母親と手を繋ぎながら楽しそうに歌を歌ってた姿を見て自分も母親と歌を歌いたかった。


だからいつか迎えに来てくれたときのために一生懸命歌を練習してた。



でもそれは叶わない夢だった。


いつになっても母親は迎えに来ない。


そして見てしまった自分ではない子が母親と手を繋いで歌を歌ってた姿を。



「歌は母親を思い出すから嫌いなんだ。でも歌いたいって気持ちもあって。でも歌えない」



あたしはピアノの前に座り蓋を開いた。



「あたしがお母さんの代わりになる。一緒に歌歌おう」

彼が歌ってた歌を弾く。

昔、よくお母さんと手を繋ぎながら散歩したときに歌った曲。


お母さんの姿を思い出しながら歌う。


あたしがお母さんにしてもらったことを央にしてあげるんだ。