チャイムが鳴り、滝くんを囲んでいた女子の団体は渋々席に着いた。


「ふぅ…」


横でため息をつくのが聞こえた。

…大変だなぁ、イケメンも。


「…あの」

「えっ、あっ、あたし?」


滝くんに声をかけられ、自分を指差す。

うん、と頷く滝くん。


「なに…かな」


「俺、まだこの学校の教科書、間に合ってなくて。教科によっては持ってるんだけど…。持ってないやつ、見せてくれない?」


「あ、うん。いいよー」


机をくっつけて、教科書を真ん中に置く。

「えっと、…マキさん?マキちゃん?」

「あ、マキはあだ名なの。真木野 さくら。よろしくね」


「…さくら」


「うん、まぁあんまり呼ばれてないけど。」


てかなんで下の名前?

とりあえず、にこっと笑っておく。

「…ふぅん。」

何だその反応。


そうこうしている間、女子の視線はこっちに釘付けだったらしい。

それを知ったのは、1時間目が終わった休憩時間であった。