「すんごかったよ。女子みーんな、2人のほう見ててさ。会話は聞こえなかったみたいだけど、もう鬼みたいな」
ちーちゃんは両手でツノをあらわし、頭の横につけてそう言った。
「…え、そうなの?」
「うん。なんか滝くん笑ってたし」
…笑ってた?
いつ。
どの場面で。
隣にいたあたしには記憶ないぞ?
…顔見てないからかもだけど。
「…それはそれは、怖いなー」
今もまた、滝くんの周りには女子の壁ができている。
噂を聞きつけて、他クラスの女子も混ざってるようだ。
うーん、ちょっとアレは敵にしたくないよ。
「まぁ、何にせよ気をつけな。女ってなにするかわかんないからね〜」
「あー、そだねー。」
見境なくなる女は本当に怖い。
気をつけよー。
「…あー、いいよ。それは…、さくらに頼むから」
…ん?
今、あたし呼ばれたような?
ちらっと横目を向けると、女子の凄まじい顔が。
…えっ?
ちーちゃんを見ると、口を引き攣りながら苦笑いを浮かべている。
もう一度、横を見ると、女子の塊の間から見える滝くん。
「さくら、暇な時でいいからさ、校内案内してよ」
………げ。
「……えっ、うん?ぇ…」
「てことで、案内はさくらに頼むから。いいよ。ごめんね」
………はい?
滝くんは女子に笑いながらそう言った。
えーーーー。
状況が理解できない。
もう一度、ちーちゃんを見る。
「……頑張って、マキ」
「………」
う…嘘でしょ?
今の時点で、あたしの周り、
…敵だらけ。
