浮かべたあざとい表情の賜物なのか、思いっきりの営業トークに、男は微笑ましそうに表情を緩めて、うんうん、と首を縦に振った。

僕は再び、男にそっと肩を預ける。
今度は男は、壊れ物を扱う様にそっと僕の肩を抱いた。

「……兎に角さ、今は性転換も手術じゃなくて遺伝子操作で出来る訳。まぁまだ一般レベルじゃないからさ。何とも言えないんだけどさ。」

男は再び話し始めた。
僕は時折、気紛れな猫の様に脚をぶらつかせながら、黙ってその話を聞く。

「今は実装前の人体実験をしているんだ、モルモットとか、シミュレーションじゃなくてね。でも此れは内密な事なんだ。」
「どうして?」
「今のこの世でも宗教団体とかさ、非科学的で情緒的過ぎる事ばっかり口煩く言う輩も多くてさ」
「……あぁ。」
「でもまぁ、100年位前に遺伝子操作がメジャー化してきた頃は人間に施術するのも駄目だった位だ。法律とかさ、規制されてて。未だにヒトゲノムを聖域視する輩は僕らの業界にも多いんだよ」

人とモルモットに、遺伝子上何れくらいの差があるっていうんだい。
全く冷静じゃないよ、馬鹿げてる。
何の為に科学は進歩したっていうんだろうね。人の為じゃないのか。