ヴァイオレンス・フィジカリズム

源氏名はファーストネームとファミリーネームから一文字ずつとって、友姫。

男の癖に『姫』なんてついている『イタさ』が、僕は気に入っていた。
こういうのはイタければイタいほど、呼ばれる度によく分からない満足感を得る事ができるのだ。

葛城はそういう事を知ってか知らずか、普段は僕のことを源氏名で呼ぶくせにたまに本名を持ち出した。

「御前、本当に詩桜(しお)に似て来たなぁ。」

何時か本当にああ成るんじゃないか。

葛城がくつくつと肩を震わせて笑う度に、肩にかかったミルクティー色の長い髪が、さらさらと落ちる。

腰まである緩く波打った長い髪に、黒い絹のリボン。
糊のきいたシャツに黒い絹のベストにパンツという、映画だか演劇だかに出てきそうな、若干イカれた様な(それこそ大昔に流行ったようなファッションだ)いでだちも、ともすると背が高い女のようにも見える葛城の顔立ちにはよく似合っていた。

何時見ても、作り物のような男だった。

「詩桜と一緒にしないでって何時も言ってるじゃないか。」


“詩桜”は蝶々館の有名人だ。