付き合って二週間が経ったある日のことだった。
渡り廊下で佐渡君と話していた時―
「もう、二週間経つのか…」
「そうだねー、…ねえ。」
私は佐渡君の何かに気づいた。
「どうした…?」
佐渡君は虚ろな目を向けて慌てて笑った。
そして、また外の桜の木に目を向ける。
おかしいよ…
「おかしいよ…」
「何が?どうした…?」
「なんで…」
私はこの後の言葉を言ったら駄目だったのかもしれない。
でも…
言っちゃったんだ。
「何で泣きそうな顔してるの…?」
「…え?」
佐渡君はハッとした顔で外の桜の木から私へと瞳を移した。
そして、しばらくの沈黙が流れる。
重々しくて辛くて…
その沈黙を最初に破ったのは佐渡君だった。
「なあ、俺らが付き合ってること誰かに言った?」
突然の質問だったけど私は意外と冷静沈着に答えていた。
「話してないよ。」
「そっか…、あのさ、これからも話さないで欲しい。」
えっ…?
何で、何でそんなこと言うの?
私が佐渡君と釣り合わないから?
可愛くないから?
どうして?
「な、んで…?」
何故か涙が出そうになってきた。
「…それは、」
佐渡君も辛そうに目を伏せた。
「それは、今は言えない。」
何で…?
何で言えないの?
「もう、佐渡君なんて知らない!」
私は全速力で渡り廊下を後にした。