あの時の僕らは

「ねえ。また、夏が来るね」
僕、西内真広と幼馴染の小堀和は学校からそう遠くない公園のベンチで近づいてくる夏を感じていた。
「あぁ」
素っ気なく応える和は自動販売機で買った炭酸飲料を飲んでいる。
このやり取りは三年前から続いていた。
僕らにとって、意味のないようで、重要な意味をもつ会話。
僕らが忘れられない彼女と僕らを繋ぐただ一つの会話。
梅雨入りすると同時に、僕らの心に雨が降り、梅雨明けするの同時に水溜りと化した心が熱でじわじわと湿度を上げる。
そして、本格的な夏に入る前に枯れてしまう心は、潤いを求める。
「和、朱が帰って来るんだって」
「帰って来る?それは軽い里帰りという意味か?」
「いいや、朱がこの場所に戻ってくるって意味だよ」
いつもはクールにポーカーフェイスな和があからさまに驚いた顔をする。
そして少し頬を緩めた。
顔は整っているのにいつも無表情で眉間に皺を寄せている和が柔らかく、優しく笑うのは和と朱と僕の三人でいる時だけだ。
「朱と夏を過ごすのは久しぶりだな」
「そうだね、四年振りだよ。もう四年たったんだ。僕も和もあの頃より少しだけだけど大人になった筈だよ」
僕らの心を潤すのは朱との日常。
少し成長した高校二年の夏。
朱が帰って来る。