「ひな、宿題やってきた?」 
春になって校庭の桜達が満開に咲いている。
風になびかれては花弁がきらきらと輝きながら地面をピンク色に染めている。
窓の外に見とれてボーッとしていると友人の優衣がノートを私の机にドサッと置きながら聞いてきた。
「宿題なんてあったっけ。」
窓のピンクな世界を眺めながら吐き捨てるように言うと優衣は「え。」
っと驚いていた。
優衣は緑色のノートをあさり、ある1ページのところを目の前に出してきた。

…。
数学150問…。

「やばっっ、忘れてた!!」
私が机の中の物を出そうとすると同時に頭上から「はぁ。」という溜め息が降ってきた。
溜め息つくと幸せが逃げるんだぞー。と言ってやりたいが今は数学と言う名の大魔王を倒すミッションがある。


やっと教科書を全部出し終えたら机の奥にグチャグチャに丸まった大魔王が姿を現した。

「優衣っ!!見せて!!」
グチャグチャのプリントを伸ばして綺麗にしながら優衣に答えを欲求する。

優衣は手をヒラヒラさせながら
「私、パス。」
と言い捨て私の机から離れた。

「くっそー!!あの馬鹿優衣めっ!!」
教室に響く声で言ってやると廊下から
「なんだとーぅ!!馬鹿ひなっ!!」
なんて声が聞こえたのは空耳だろう。

1人で悪戦苦闘していると机にもう一枚のプリントが置かれた。
もう一枚のプリントには答えがビッシリ書いてある。

「ヒロじゃん!!見せてくれるの?」
「ん。」
無愛想で不器用なヒロだけど、人一倍優しい。
こんな所が私は好きだった。
ドキドキ感が抑えられてない私を知らないヒロは前の子の椅子を使って私と向かい合わせになった。

頬杖をして私がヒロのやってきたプリントと白紙のプリントに写している姿をじっと見ている。
視線に耐えきれず
「丸付けお願い!!」

ヒロはニヤりと笑い
「俺がやったんだから全部丸。」
と言って赤ペンのキャップを外した。