紅ほっぺ




―――




家に帰ると鞄を放り投げ、ベッドに自身も放り投げた。



「あ"ーーー。」




天井に向かって唸り声をあげる。


本当に好きなんだ。
田口さんの事。

でも本当の僕をまだ見せられていない。





『佐藤くん!男の子が喜ぶお菓子って何かなっ…!』




今日の放課後彼女に聞かれたこの一言。


顔が真っ赤だった。


意地悪に"せんべい"とでも答えてやろうかと思ったけどやめた。




『クッキーとか…、喜ぶんじゃないかな。』



そう笑いかけた。

これまたベタな返事。
誰にでも答えられる安易でつまらないアドバイス。


…それでも君は最上級の笑顔で言う。



『ありがとうっ…!』



本当に参る。




…本当の僕は優しくなんかない。

音楽と言ったらアップテンポなバンドの曲しか聴かないし、

ろくに親孝行すら出来ない。


老人の手を取りに行くような奴でもなければ、



君に幸せになって欲しい訳でもない。


自分が幸せになりたい。
自分が一番。

そんな奴なんだ僕は。



…本だって…、
読まないんだよ…。





鞄から半分だけ出ている本を見つめた。

そこまで分厚くない所には純粋に胸を撫で下ろす。





ひらりと表紙をめくってみた。